平成最後の日

平成最終日は天地を潤す雨の一日。

平成最終日の椿「式部」です。

平成最終日の名古屋・両口屋是清の「千なり」です。

平成最終日の「詩歌をちこち」です。

詩歌をちこち 【玉川香】

|①『千載和歌集』巻第四 秋歌上 281
|  権中納言俊忠かつらの家にて、水上月といへるこころをよみ侍ちける   源俊頼朝臣
あすもこむ野ぢの玉川はぎこえて 色なる浪に月やどりけり
〔大意〕明日も来てみよう。野路の玉川の両岸から川面に一様に萩花が枝垂れてゆれる。その枝先を超える、色を堪えた波の上に月が映っているよ。

|②『拾遺和歌集』巻第十四 恋四 860
|      よみ人しらず
玉河にさらすてづくりさらさらに 昔の人のこひしきやなぞ
〔大意〕多摩川に晒す手作りの布の、その「さら」というように、「さらさらに」、今更ながら、以前親しくしていた人が恋しく思われるのは、どうしたことか。

|③『新古今和歌集』巻第六 冬歌 643
|  みちのくににまかりける時に、よみ侍りける   能因法師
ゆふさればしほ風こしてみちのくの のだの玉河千鳥なくなり
〔大意〕夕方になると潮風が離れた海から吹いてきて、陸奥の野田の玉川に千鳥が鳴いているよ。

|④『新古今和歌集』巻第二 春歌下 159
|       皇太后宮大夫俊成
こまとめてなほ水かはむ款冬の 花の露そふゐでの玉川
〔大意〕駒を留めて引続き水を飲ませよう。山吹の花影の上に花の露まで落ち添うている井手の玉川を見ようために。

|⑤『後拾遺和歌集』第三 夏 175
|  正子内親王のゑあはせし侍けるかねのさうしにかき侍ける   相模
みわたせばなみのしがらみかけてけり うの花さけるたまがはのさと
〔大意〕見渡すと、一面に白波が立って作った柵(しがらみ)がかけてあるよ。卯の花が咲いているこの玉川の里では。

|⑥『風雅和歌集』巻第一六 雑歌中 1788
|  高野奥院へまゐる道に、玉川という河のみなかみに毒虫のおほかりければ、このながれをのむまじきよしをしめしおきて後よみ侍りける   弘法大師
忘れてもくみやしつらんたび人の たかののおくのたま川の水
〔大意〕(飲むなと注意してはおいたが)もしやそれを忘れてでも、汲んで飲みでもしたろうか、旅人が。高野山の奥の玉川の水を。

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)①②③④⑤ /『風雅和歌集全注釈』下巻(笠間書院)⑥

※源俊頼(みなもとのとしより)
※能因法師(のういんほうし)
※藤原俊成(ふじわらのとしなり・しゅんぜい)
※相模(さがみ)
※弘法大師(こうぼうだいし)

※《名所》①近江…萩(秋)、②武蔵…調布(雑)、③陸奥…千鳥(冬)、④山城…山吹(春)、⑤摂津…卯花(夏)、⑥紀伊