花・花・花

秋の花の雁金草(カリガネソウ)が早くも咲いています。
まだ梅雨明けもしていないのに、です…。
今年の秋は案外早く来るのかもしれません。

雁金草が咲く度に、苗を買い求めた「八ヶ岳倶楽部」のオーナー・柳生博さんを思い出します。
八ヶ岳倶楽部の散策路で、ツーショットに笑顔で応じて下った姿が印象に残っています…。(^O^)

槿(むくげ)が盛んに花開いています。
底紅の宗旦槿に続いて、庭の白花の遠州槿、色ものの槿も咲き出しました。

※写真は二枚とも名古屋市蓬左文庫前の槿です。(絶好の咲き具合でした!7/6)

詩歌をちこち 【菊花香】

[和歌]

|『拾遺和歌集』巻第三 秋 184
|三条のきさいの宮の裳ぎ侍りける屏風に、九月九日の所   もとすけ

わがやどの菊の白露けふごとに いく世つもりて淵となるらん

〔大意〕我が家の菊の白露は、これから毎年の九月九日ごとに、いったい幾代積もり溜まって、淵となるのだろうか。

*和歌出典『新編国歌大観』(角川書店)
*大意出典『新日本古典文学大系』(岩波書店)

※同歌:『和漢朗詠集』巻上 秋 265
※同歌:【重陽香】
※清原元輔(きよはらのもとすけ)

==========

[漢詩]

①酈縣村閭皆潤屋
②蘭蕙苑嵐摧紫後 蓬莱洞月照霜中
③此花開後更無花
④此花開盡更無花

|①『和漢朗詠集』巻上 秋 269
酈縣村閭皆潤屋 陶家兒子不垂堂  善相公
酈(てき)縣(くゑん)の村閭(そんりょ)は皆(みな)潤屋(じゅんをく)す
陶家(とうけ)の兒子(じし)は垂堂(すいだう)せず   善相公(ぜんしゃうこう)

〔現代語訳〕菊の花が咲いているのは黄金を草むらにばらまいたようです。だから酈縣の甘谷の村里は素晴らしい富豪の家に見えるでしょう。陶淵明(とうえんめい)の家でも、千金がおかれているようだから、子供たちも、堂の端近くで危ないわざもしないでしょう。

|②『和漢朗詠集』巻上 秋 271
蘭蕙苑嵐摧紫後 蓬莱洞月照霜中  菅三品
蘭蕙苑(らんくゑいゑん)の嵐(あらし)の紫(むらさき)を摧(くだ)く後(のち)
蓬莱洞(ほうらいとう)の月(つき)の霜(しも)を照(てら)す中(うち)   菅三品(くわんさんぼん)

〔現代語訳〕蘭のたぐいを植えた花園を秋の風が無残にもくだき去った後、禁裏の庭いっぱいに、寒い月の光が白い霜を照らしている中に、菊の花だけが点々とくさむらに咲きほこっています。

|③『和漢朗詠集』巻上 秋 267
不是花中偏愛菊 此花開後更無花  
これ花(はな)の中(なか)に偏(ひとへ)に菊(きく)を愛(あい)するのみにあらず
この花(はな)開(ひら)けて後(のち)更(さら)に花(はな)の無(な)ければなり   元(げん)

〔現代語訳〕私は、花の中でただこの菊だけを愛するというわけではありません。けれど、秋の一日菊を賞してすごすのは、この花が咲いたあとは、もう次の春まで花というものが、いっさいなくなってしまうからなのです。

|④『全唐詩』巻十五 元稹十六 菊花
秋叢繞舎似陶家
遍繞籬辺日漸斜
不是花中偏愛菊
此花開尽更無花

*漢詩出典『日本古典文学大系 和漢朗詠集・梁塵秘抄』(岩波書店)/④は267頭注より
*現代語訳出典『和漢朗詠集 全訳注』(講談社学術文庫)

※善相公(ぜんしょうこう)=三善清行(みよしのきよやす)
※菅三品(かんさんぼん)=菅原文時(すがわらのふみとき)
※元=元稹(げんしん)