白梅は一枝に香る

梅園の白梅がそろりと開花し始めています。

※「野梅」

既に開花している紅梅も三種ほどありましたが、梅園内に植えてあるたくさんの紅梅・白梅の木々が開花するまでには、もう少し日数が必要なようです。
梅の色には白、紅、淡紅などが、花弁には一重、八重が、姿には枝垂れるものもあり、種類となると銘も含めて多数あるようです。

梅と云えば、先ずは「松竹梅」でしょうか…。
「歳寒の三友」と称し目出度いもののしるしとして画題や祝い事に用いられる松竹梅です。
そういえば、お酒の銘柄にもありましたネ…。
取り合わされる鳥としては、松に鶴、竹に雀、梅に鶯が定番となっているようです。

また、「鶯宿梅」も名が通っています。
京都・相国寺の塔頭「林光院」に伝わっている梅の木です。
寺のHPには鶯宿梅の謂れが以下のように記してあります。

「大鏡」によれば、村上天皇の天暦年間(947―956)、御所の清涼殿の梅の木が枯死したので、それに代わる梅の木を探し求めさせたところ、西の京の紀貫之の娘の屋敷の梅がその選に応える名梅であるというので、天皇の勅令に依り御所に移植されることになったのであるが、別れを惜しんだ娘は短冊に
勅なればいともかしこし鶯の宿はととはばいかがこたへむ
という一首を詠み、梅の枝に懸けておいたところ、この歌が天皇の目にとまり、その詩情を憐れんで元の庭に植え返されたという。(大鏡・拾遺和歌集)

香道の組香では「梅花香」や「梅烟香」に梅の花と雪、烟との対比を見ることができます。
矢張り、梅の花は白梅です…。(^^)

梅は「名花十友」にも名を連ね、梅花は「清友」とされています。
白梅の清らかな色と香りは古くから賞玩の対象となっていたことが解ります。

今日のタイトルは、白梅一枝香(白梅は一枝に香る)となっていますが、もちろん元本があります。
志野流香道で用いられている聞香炉に書かれている文言「丹桂一枝香」のもじりです。(^^)

「丹桂一枝香」が書かれている香炉は、「折桂一枝香」と書かれている香炉と一対で用いられ、乱箱に組んで運び出すとき、そして地敷の上に出し置くときに並べ置かれます。
2020年に放送されたNHKテレビ「歴史秘話ヒストリア~正倉院宝物~」の中で、家元・松隠軒で行なわれた聞香席の映像を見ると、香元の左膝前に「丹桂一枝香」の香炉が置かれていることが見てとれます。(ということは、右膝前に「折桂一枝香」の香炉)

香道の規矩作法には、他の芸事と同様にバリエーションがたくさんあるように感じています。
例えば、男手前と女手前との微妙な違い。

地敷を畳上に開くとき、香炉に香炭団を埋めるとき、銀葉箱を扱うとき等、男女で所作が異なっています。
それぞれの所作は市販本にも詳しく載っていますが、個人的にはとても面白く、なるほどよく考えられていると思います。

火取香炉に火取火箸をさすときにも違いがあるように聞いた覚えがありますが、定かではありません。

公園のマンサク【満作】の花が早や咲きはじめています。(^^)
春です。