源氏物語の植物

『茶道雑誌』8月号に「今月の一冊」として紹介されていたのが、京都府立植物園名誉園長・松谷茂氏の著書『植物園の咲かせる哲学』(教育評論社)。

 

「咲かせる哲学」とは少々お堅い感じですが、表紙の画から想像できるように、本文はやわらかい軽妙な語り口で、様々な植物についてのウンチクが披露されています。

身近なところで「そうなんだ~」と納得したことの一つが第2章「名誉園長と植物散歩」に登場した「アジサイ」。
ガクアジサイ、ヤマアジサイ、西洋アジサイについてひとしきり述べた後、「アジサイが日本の園芸世界の表舞台に登場してきたのはようやく戦後になってから」として、その理由が次のように語られています。

①花がらがいつまでも落ちないため潔くない。
②花色(がく片)が変化するため移り気、節操がない。
③がく片の基本枚数は4枚…死を意味する。

つまり、武士道精神からはずれた花だったというのです。(なるほど、なるほど!)
戦後になってようやく見直され、今どきアジサイ寺と呼ばれる所のほとんどは、1960年代以降に興ってきたとあります。(そうなんだ~)

圧巻は第3章「植物でよむ『源氏物語』」。
4月の「山吹(ヤマブキ)」から始まり、5月「撫子(ナデシコ)」、6月「橘(タチバナ)」、…と続き、3月の「樺桜(カバザクラ)」まで、『源氏物語』から該当部分を引きながら、登場人物と植物の関わりについて詳しく述べてあります。
加えて、その植物についての豆知識・こぼれ話が添えられているので、読んでいて実に楽しくなります…。(^^)

ところで、『源氏物語』に登場する植物は何種類ぐらいあるのでしょうか?
京都府立植物園HPにある「源氏物語の植物」のpdfを開いて見ると、「登場する植物」の概要、植物園内に植栽されている「源氏物語の植物の所在等」、そして園内地図や季節ごとの花の写真などが載せてあります。

登場する植物については以下のように記してあります。
「「源氏物語」に登場する植物は、草本類が約50種、木竹類が約60種で合計110種とされ、最も出現回数が多いのはマツで約60回、モミジや紅葉も約60回、次はサクラで約50回、ウメ、フジ、ヤマブキ、ナデシコ、キク、ハス、オミナエシ、タチバナと続く。」

園内に植栽されている源氏物語の植物の一覧表(86種)と、植栽場所の地図には脱帽です。(資料として完璧の璧!)

京都の地下鉄「北山駅」は何回も利用していますが、近くの府立植物園にはまだ入ったことがありません。

コロナ禍が収束したら、是非是非、いの一番に京都府立植物園へ行こうと思っています。(^^)